フィットネスジムを開業したい。でも、物件取得やマシンの導入、広告費や人件費など、思った以上にお金がかかる──。こうした悩みを抱える方に向けて、今回は実際に日本政策金融公庫(以下、日本公庫)に出向き、開業資金に関する情報を直接ヒアリングしてきました。
この記事では、ジム開業に必要な費用の全体像から、日本公庫の創業融資制度、そして審査を通過するために意識すべきポイントまで、実務目線で整理しています。
ジム開業に必要な費用の内訳
ジムの形態にもよりますが、開業時にかかる主な費用は以下のように分類されます。
- 物件取得費:保証金・礼金・仲介手数料など。都内であれば数百万円かかることも。
- 内装・設備費:トレーニングマシン、シャワー、ロッカー、照明など。スモールジムの場合は数百〜1,000万円以上が目安。
- 備品・消耗品費:受付カウンター、タオル、掃除用品などの購入。
- 広告宣伝費:オープン前後のキャンペーン、ホームページ、ウェブ広告、チラシなど。
- 人件費:スタッフやトレーナーの給与。開業初期はキャンペーン等もあり、売上が安定しないため、事前に3〜6か月分の人件費を用意しておくと安心です。
これらを合計すると、スモールジムであっても開業に1,000万円前後かかるケースが多く、100坪以上の24時間ジムだと4,000万前後かかる場合もあります。
そのため、自己資金のみで開業するというのは非常に難易度が高く、資金調達の戦略が不可欠になります。
弊社では融資の際にもお使いいただけるエリア調査データを元にしたシミュレーション作成も可能ですのでお気軽にお声がけください。
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日本政策金融公庫の創業融資とは?
開業資金の調達手段として、多くの起業家が活用しているのが「日本公庫の創業融資」です。これは創業予定者、または創業後おおむね7年以内の事業者を対象とした融資制度で、以下のような特徴があります。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期間:
設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) - 利率:基準利率が適用されますが、以下の要件に該当する方は特別利率が適用される場合があります。
私が相談した際、日本公庫の担当者が繰り返し強調していたのは「自己資金の割合」と「事業計画の整合性」でした。
創業融資については公庫の以下パンフレットが参考になります。

審査で見られる3つのポイント
1. 自己資金は「信頼の証」
自己資金は、単に借入額を抑えるためのものではありません。金融機関にとっては、開業者の本気度や準備の積み重ねを測る指標でもあります。
一般的には、総事業費の3割前後を自己資金で用意するのが望ましいとされており、それに満たない場合は理由の説明が必要です。
2. 事業計画書は「現実感と一貫性」が命
日本公庫では、フォーマットに沿った創業計画書の提出が求められます。見られるのは「売上の見込みが甘すぎないか」「客単価と回転数が合っているか」「支出と利益に矛盾がないか」など、数値の整合性。
担当者曰く「感覚で作ったプランはすぐにわかる」とのこと。市場調査や同業比較の裏付けがあると説得力が増します。
また、公庫が用意しているテンプレートはあくまでもテンプレートなので、ご自身でPDF等にまとめていただいても全く問題ないとのことでした。
(テンプレートはこちら)
3. 経験と資格のアピールも重要
ジム経営が初めてでも、フィットネス業界での勤務経験や資格(例:NSCA-CPT、NESTA-PFTなど)がある場合は、しっかりとアピールしましょう。「この人なら継続的に経営していけそうだ」という信頼につながります。業界経験がない場合でも経営に関する経験があればよいとされる可能性も有ります。いずれも経験がない場合は自己資金の重要度がさらに上がると担当の方が話していました。
融資の流れと必要書類
相談から融資実行までは1〜2か月程度が一般的です。主な流れは以下の通り。
- 事前相談(電話またはオンライン予約、予約訪問)
- 必要書類の準備・提出(創業計画書、見積書、通帳コピーなど)
- 面談(対面 or オンライン)
- 審査
- 融資実行
提出書類はすべて「根拠のある数字」と「具体性」が大切です。
必要な書類については以下をご参照ください。
また公庫より公開されている「創業の手引」についても事前に読んでおく事をお勧めいたします。
実際に融資を受けた開業事例
実際に融資を受けてジムを開業した方のケースについてはお問い合わせください。
複数ある事例の中から、ご参考になりそうな事例をご紹介いたします。

実際に日本公庫へ足を運んで聞いてきた「創業融資のリアル」
フィットネスジムの開業支援を行う中で、多くの方が直面するのが「資金調達の壁」です。
とりわけ日本政策金融公庫の創業融資は、有力な手段である一方、その審査は決して甘いわけではありません。
そこで今回は、私が実際に日本公庫の窓口を訪問し、融資制度の概要から審査の着眼点まで、現場の担当者に直接確認してきました。
「創業計画書がすべて」ではない
日本公庫では、公式に用意されている創業計画書のテンプレートがあります。
しかし、実際に相談に行って分かったのは、「テンプレート通りに埋めるだけでは不十分」だということ。
担当者の方も、
「テンプレートの項目は最低限。でも、業種によって“それ以外にも当然入っていてほしい情報”はある」
と話していました。
たとえばジム業界であれば、商圏分析や会員見込みの根拠は重視されます。これがないと「売上予測がふわっとしていて信頼できない」と見なされる可能性が高い。
つまり、計画書は書くというより構築するという意識が必要です。
追加資料は何枚あってもOK
「補足資料ってどれくらい出していいんですか?」という質問に対しても、
「制限はありません。むしろ、補足があるのは歓迎です」
とのこと。Excelで作成した売上シミュレーション、参考にした商圏データ、過去のトレーナー実績など、出せるものはすべて出すスタンスで臨むといいでしょう。
公庫での融資申請は“審査の場”。事前準備は別機関で整えるのが安心
実際に訪問してみて感じたのは、日本公庫の窓口は「親身になって創業計画を一緒に練ってくれる場所」というよりは、「審査を受けるための正式な申込先」という印象に近いということです。
申込後から面談までの間に、「ここはこうした方が良いですよ」といった具体的なフィードバックはあまり期待しすぎない方がよさそうです。
そのため、創業サポートセンターや、自治体が開催している創業セミナーなどの第三者機関を活用し、計画書の添削やアドバイスを事前に受けておくと、より安心して本番に臨めると感じました。
計画書の完成度を高めるという意味でも、公庫だけに頼らず、外部の支援機関とうまく併用するのがおすすめです。
ジムの物件契約は未契約でもOK
「物件を契約していないと融資が下りないのでは?」という不安の声はよく聞きますが、日本公庫の回答は以下でした。
「まだ契約していなくても大丈夫です。審査の時点では“予定ベース”で構いません」
とはいえ、出店場所が決まっていないと商圏分析ができないため、「計画としての具体性」は弱くなります。
エリアが確定していれば、地図や人口動態、競合店との位置関係をまとめておくと有利です。
弊社でもエリア調査等を無償でサポートしていますのでぜひ以下よりご依頼ください。
個人信用情報の重要性
あまり語られませんが、融資審査では「個人の信用情報」もチェックされます。
クレジットやローンの延滞履歴がある場合、融資自体が難しくなる可能性があります。
「CICなどの信用情報に“キズ”がある方は、まずそこをクリアにすることが優先です」
というアドバイスもありました。もし心当たりがある場合は、先に開示請求して確認することをおすすめします。
1,000万円を超える融資のハードル
ジムの開業では、設備投資や内装費が重なるため、必要資金が1,000万円を超えることも珍しくありません。ただし、日本公庫のスタンスとしては、
「1,000万円を超えるとかなり審査が厳しくなる」
ということでした。
このラインを超える場合は、以下の対策が有効です:
- 自己資金比率を高める
- 融資金額が1,000万円未満におさまる形で段階的開業を計画する
- 一部をクラウドファンディングや親族支援で補う
まとめ:融資を受けるには「準備」と「現実感」
日本政策金融公庫の創業融資は、しっかり準備すれば開業時の資金調達にとって非常に有効な手段です。ただし、通過するには「リアルな計画」と「積み重ねた準備」が不可欠。
これからジムを始めたい方は、まずは自己資金を用意し、創業計画を数字ベースで組み立てましょう。
弊社ではジム開設に関する様々な無償サポートを提供していますのでぜひ以下資料よりご確認ください。


